日本シリーズ第7戦。最後のマウンドに上がったのはやはりこの男だった。
楽天の星野監督は、前日の第6戦で160球を投げきった田中を送り出した。
アナウンスされた瞬間、スタンドは地響きを上げるような歓喜に包まれた。
とはいえ、田中の投球は、前日の疲れもあるせいか、ストレートが走っておらず、
2死一、三塁のピンチを招いたが、最後の打者を得意のスプリットで空振り三振に
仕留めると、ナインは背番号18のもとに駆け寄った。
前日の第6戦では、不敗の田中で負けただけに、ショックかと思いきや、美馬投手は、
「田中がああいうピッチングをしていたし、悔しい思いをぶつけたいと思った」
右打者の内角を鋭くえぐるシュートを軸に、巨人打線を6回無失点に封じた。
大一番での好投でMVPを獲得した。
七回からは第5戦でリリーフ登板した則本も投入。
シリーズでフル回転したルーキーは2回無失点と好投した。
指揮官自身は、
「考えられない継投だが、最後を締めくくるのは彼がふさわしい」
とベンチ入りを志願した田中をマウンドに上げた理由を説明した。
結果、今季の先発陣を支えた“3本柱”による完封リレーで日本一を勝ち取った。